::東京アナーキスト:: さっきから降り積もるは吸殻ばかり。 言葉一つも交わさないこの状況は然してこの距離においては珍しいこと でもないのだが。 かといって不毛過ぎる。この沈黙は。 灰皿もそろそろ替えないと決壊間近だし。 俺が動かないとたぶん目の前のこの男も動かない。 仕様が無い。 「あのさ」 「ユッキーってぇー」 折角切り出した言葉を見計らったように被せられ、それでもこの男はま ったく意に介さぬ様子で。 「俺のことキライ?」 そう言ってまた灰皿に山を築く。 「けんちゃんはキライじゃないよ。」 それは全くもって今更な会話だったけど。 俺は相手に視線をやらぬまま。 ソファにぐったりもたれかかったまま。 「ただB面のアンタがキライなだけ。」 ケンちゃんは甲高い声を上げて笑った。 ああ今日もまた時が襲来する。 自宅のソファはスタジオのそれより堅くて。 放っといても育つからと貰ったサボテンは窓辺で緩やかにエンキョクし てる。 ほんとに放っといても育ちやがった。 なんて憂鬱な午後。 ふと目をやれば。 窓の向こうには、白々しい青空。 昼の空に浮かぶ月がキライ。 薄水色の空、乳白色の月、黄緑の街路樹。 どれも不釣合い。非バランス。 只淡過ぎる色の群れ。 夕闇がくればきっと、すべて忘れてしまう。 夕方4時とか5時とかの、あの妙な雰囲気がキライ。 なんだかとても汚いものが空から雨垂れてきてるみたいだから。 空が。 黄色に染まって、不自然に揺れるから。 僕の心も覚束無くなる。 拠り所を見失う。 空を眺めるのがキライ。 高いとことか、見晴らしのいいとことか。 青空も、夕焼けもイヤ。 広過ぎて、果てが無くて、 どこを見ればいいのかわからなくなってしまう。 あの空に戸惑う。 窓に区切られた空は好き。 四角くて、そこには限界があって、 だから美しいものも悲しいものもそこに見出せる。 果てが無かったら 何も無いのと 変わらないじゃない。 たぶん僕は今までずっと 見切りをつけることでうまく生きてきた。 また朝が来て。 僕はまた目を覚ます。 明け方のカラスが鳴き騒いでる。 窓辺で歪むサボテン。 差し込む朝の澱んだ光と、灰皿に積もるタバコと。 今はその退廃的な匂いだけが救い。 性懲りも無く襲来する朝という時に無性に腹が立って、曲がったサボテ ンを引っ掴みキラキラ光る窓ガラスに叩きつけてやりたかったけど。 指の腹に刺さったトゲは、如何し様も無いほど痛く。 仕方無しに僕はまた今日一日を生きるのだ。 キライなものを、汚いものを、 この身に享受しながら。 「ユッキ。」 声に、トゲの刺さった指先がチリチリと痛んだ。 「今日の俺はどっち?」 「B面。」 ケンちゃんはまた高い声上げて愉しげに笑った。 (あとがき) 20000ヒッツ悠さまリクでしたぁ〜〜 「ダークモードユッキー」がお題でしたが、ダーク・・・・ダークではない ですねーあきらかに(笑) なんかね、佐竹の中で、けんちゃんとユッキーって2人だけでしか通じ ない会話してそうなイメージあるんですよね。それこそ2人だけしかわ からない言語使ってそう(笑)そーゆーときの2人は、きっと普段は見 せない一面もでてるんではないかなぁと。 こーゆーストーリー性のまったくない話、わりと佐竹は好きですね。完 全に雰囲気だけの話。もう今回はほんまにそれなんで、雰囲気で読んで ください。文に意味ないから、全然(笑) 遅くなりましたが20000ヒッツありがとうございましたっ!!