虚言症の男。

 

 

「俺ねぇ、禁煙しようと思って。」

「え〜うっそ〜!」

「うそ。」

「・・・・・」

 

 

「リーダーリーダー。」

 スタジオのソファでのんびりと通販雑誌を読んでいたテツのもとに、どこにいたのやらケンが駆け寄ってきた。

「ん?」

「ちょっとバンドの今後について相談が。」

 呼ばれて雑誌からテツが顔を上げると、そこにはめずらしく真剣な面持ちで、ケン。
 何年かぶりに見るその表情に、自然、テツは声のトーンを落とした。

「・・・マジなん?ケンちゃん。」

「マジです。」

 常ならぬその気配に、ただならぬイヤな予感を感じながら、テツは問い返す。

「・・・なに?」

「あの先天性虚言症男をどーにかせんと今後バンドの絆が危ういです。」

 真剣な表情でケンが指差した先には、のんびりタバコを吸っているユキヒロがいた。

「な〜んや、そんなことかいな。」

 思いっきり脱力して、やや大袈裟にテツはため息をつく。
 しかしなおも食い下がるケン。

「そんなことってリーダー、大問題ですよ!」

「ユッキーの嘘吐きは今に始まったことやないやん。ちゅうかねー、あんたたち俺より年上やねんから、それぐらい自分達でなんとかしなさい。」

「・・・はーい。」

「あははは〜!」

「あっ!ほらっ、リーダー!あのあくどい笑い方見てっ!」

「あーもーだまらっしゃい。」

 遠くで高らかに笑い声をあげるユキヒロと至近距離でギャーギャー騒ぐケンに適当に手を振って、テツは再び雑誌に没頭し、完全無視を決め込んだ。
 一瞬マジになった自分がバカみたいである。

 

「ユッキー」

「ん?」

 笑顔全開のケンが、こりずにユキヒロの方にやってきた。
 にこにこ笑いながら、ケンは、

「俺な、禁煙すんねん。」

「うそでしょ。」

「うっ・・・!」

 隙も無く切り返されて、一瞬にしてケンの笑顔は崩れ去った。

「うそでしょ。」

 さらにずずいと、無表情でユキヒロが顔を寄せてくる。
 気迫に負けてケンは冷や汗を浮かべながら無意識に体を退く。
 おそるべきプレッシャー。

「う〜、うそちゃうもん!ほんまにするもん!」

 思わず言い返せば。

「へ〜え、じゃあ何時間続くか賭ける?俺勝つ自信あるよ?」

「うわーん、リィダァ〜〜〜!!ユキヒロさんがいじめる〜〜〜!!」

「子供かアンタら!」

 ついに再びテツに助けを求めたケンに泣きつかれながら、テツは雑誌を握ったまま勢いよく立ちあがった。
 もうそろそろ我慢も限界である。

「ユッキーはな、悪魔に魂を売った人やねんから、人間の俺らでは太刀打ちできんのよ。」

 とりあえず貼り付いてくるケンを引き剥がして、テツがびしっとユキヒロに指を突きつけると、ユキヒロはきょとんとした顔で見返してきた。

「なんで知ってんの?」

「へっ?」

「なんで知ってんの、悪魔と契約したこと。」

 驚いたように目を見開いて、ユキヒロは真顔で問い詰めてくる。
 その人外な迫力に、思わず後ずさるテツ。
 なにやら暗黒なオーラが漂っている。

「・・・冗談やろ?」

「ほんとだよ。」

「・・・じょ・・」

「ほんとだってば。」

 間髪入れずユキヒロに言及され、押し黙ってしまったテツとケンは。

「う・・・うわ〜ん、ハイド〜、ユッキーがいじめる〜!」

 とりあえず通り掛かりのハイドを巻き込むことにした。

「よーしよしよし、テッケンコンビでどうしたん?」

「ユッキーがな、嘘つくねん!」

 簡単にノッてきたハイドに、2人していつのまにか笑ってるユキヒロを指差すと。

 今度は、ハイドが意外そうなカオをして。

「ユッキーは嘘吐きちゃうよ?」

「へ?」

 しごく真面目にそう言うものだから、テツとケンは思わず2人同時に素っ頓狂な声を上げた。

「ユッキーは嘘なんかつかへんよ?な、ユッキー」

「当たり前でしょ。」

 ねー、っとハイドとユキヒロは笑顔を交し合うが。

 納得できない者がここに2名。

「・・・世の中なにが怖いって正直な嘘吐きが一番怖いわ。」

「ほんまにな。よう意味わからんけど。」

 俺もわからん、とケンはうなづいて、結局完敗を喫した2人であった。

 

 


最近はユッキー祭ですが、やはし幼馴染みコンビはいいなぁと思いつつ書きました。
実際FLAでも組むコンビによってすげー雰囲気変わりますよね〜。
去年の夏あたりは2人で組んで番組の最初にフリートークしてたじゃないですか。
あれよかった。とくにハイドさんとユッキーはかわいくてしゃーなかった(笑)

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