灰とダイアモンド

 

 

 

 

愛だの恋だのってもういい加減いい歳したオッサン4人でするよーな話でもないのだろうけれど、
どうせこういう、死ぬほどのヒマを持て余した時じゃないとできない話題だからしとこうと思う。

 

 

「なぁ」

「ん?」

「『愛』とさぁ、『恋』のちがいってなに?」

テツは相当マジメな顔で尋ねた。これ以上ないほどに。
とはいえこの男はアニメのことでも白家電のことでもごくごく真顔で語るのだが。

そしてその疑問に真顔で答えられるのも、ハイドならではの芸当で。

「うーん、なんやろなぁ。」

いつものように、本当にちゃんと考えてるのかどうなのか怪しいぐらいにぼんやりした口調で返す。

「『恋』は下心とはよくいったもんだけどね。」

下心ねぇ。
ユキヒロの言葉に、相槌をいれるテツ。
恋は下心。じゃあ愛はなに?
眼前のテーブルの上には飽和状態の灰皿。

「ここは恋愛のエキスパートに聞いてみよう。」

「え?だれだれ?」

「ケンちゃーん。」

がくっ。
一瞬目を輝かせたテツだったが、廊下でストレッチしていたケンを呼び込むハイドに、思わず肩をコケさせた。

「なぁにぃー?」

「あのさー『恋』と『愛』のちがいはなにって、テッちゃんが。」

廊下に聞こえるほどの大声で言う話題とちゃいまんがな。
なんだかこっ恥ずかしくなってくるテツであった。

「簡単やんー恋はセックスがいるっ!愛はセックスがいらんっ!」

「うわ、ヒドイ。」

「青少年の夢を壊す発言やで。」

ユキヒロがその会話に1人で爆笑してる。

「愛にもセックスは必要じゃないん?」

ツッこむ点を間違えてる気もするが、廊下でまだ
足を伸ばしたり屈伸したりしてるケンに向かって、ハイドが問うた。

「んーまぁでも、愛にはむしろキスのほうが大事やと思うよ。」

「なんで?」

「セックスは惰性やけどぉ、キスはトキメキやん?」

トキメキのある愛って、ステキやん。

素面で言えるケンは今とてつもなくロマンチストだ。
思わずテツは押し黙って。
ハイドは嬉しそうに笑った。

「ビューリホー?」

「イエース、ビューリホー」

応えるケンも笑って、ようやく部屋に入ってくる。
ソファに座ったまま腕のストレッチをしながらユキヒロは、

「よく言うよね、結婚した夫婦がセックスはできるのにキスはできないっていうの。」

「それは最中にってこと?」

「うーんどっちもじゃないかなぁ。」

最中にも日常にもできない。
キスは、トキメキだから。

「結婚したらトキメキがなくなるってこと?うわーおそろしぃー」

と、ハイドは苦笑い。
しゃーないよ、結婚はなにもかも日常になっちゃうから。
ケンは冷静に言い放った。

「じゃあさあ、そもそも、愛、って、なんなん?」

言い出したら止まらないテツの性質。
とことん切り詰めて議論するのが好きらしい。

「愛。またでっかくきたなぁ。愛。」

まるでなんの意味ももたないモノのように「あい」と呟くハイド。
眉根をよせ、うーんと考え込むようなポーズをとる。

「愛とはぁー、イジワルしないこと。」

「また消極的な愛やな。」

「でも日本の夫婦によくある愛って、同情みたいなもんらしいし。」

ハイドの言い分はもっともだ。
恋にはきっとイジワルもある。試したりもする。けど愛はそんなことしない。
ある意味同情かもしれない。

どうやら反対向きのベクトルらしい『愛』と『恋』。
ならば『愛』とは?

「宇宙はどのぐらいの大きさやと思う?」

ケンの問いかけは唐突だった。
正面に見据え、テツは答える。

「無限。」

「なんでわかるの?」

「だって、本とかにそう書いてるやん。」

「でも証拠はないやろ?見たわけでもないし。」

問い詰めに、一瞬黙ったテツだが、またすぐにケンの顔を見上げて。

「・・・でも俺はそう信じてる。」

「そのとーり。愛もそれといっしょ。」

簡単にポイと投げ落とされた言葉に、テツは唖然とした。
なんの言い返し様もなくて。

「・・・・・ケンちゃん哲学やなぁ。」

「えへへ」

テツの変わりに口を開いたハイドに、ケンはいつものように笑った。

 

 

 

「よっしゃ行くでぇー」

円陣を組み気合のはいってない気合をいれ、悠々とステージに向かうハイド。
目をやると、そこにはキラキラ光る洪水。

その後ろに順番についていきながら、テツはなんとなくポツリ呟いた。

「・・・結局『愛』と『恋』のちがいってなんなんやろ。」

誰の答えも期待してなかったのだが。

「灰とダイアモンドみたいなもんなんじゃない?」

眼前を見ると、背中を向けたままのユキヒロがいて。

「どーゆう意味?」

「さぁー」

振り返らないまま、ユキヒロもステージへと上がって行った。

つまりそれぞれがそれぞれの形でもっているのだ。
愛と、恋と、哲学は。













ドゥリィーーームッ!!(叫)
ある意味甘い話題だな。溶けそうだな。
たぶん小説執筆時間最短記録。
や、もともとは会話とかはわりと前に書いとったんですけどね。
なんとなく勢いで書いてみた。
「灰とダイアモンド」ってたしか映画のタイトルやったはずです。どんなんか知らんけど。


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