オーバーテイキュー　トゥナイト
overtake you, tonight!

　

　

「ハッピバ〜スデ〜、テッちゃ〜ん♪」

「ありがとー！」

　

　今日は１年に１度の、特別な日。

　祝福されて。

　ひとつ年を重ねた俺は、彼の横に並ぶ。

　

「おめでとーテツさん。」

「んっふふふ。今日からケンちゃんと同い年やで、俺。」

「１ヶ月ちょいだけやん。」

　ケンちゃんは笑う。

　

　今日から５６日間だけ。

　年上の幼馴染みは、同い年になる。

　

　

　身長はいつまでたっても追いつかへんけど。

「俺年下やないからな、ケンちゃん。」

「はいよ〜」

　

　ちっちゃいころから一緒におって。

　なにひとつ抜くことできんかったけど。

　唯一彼に追いつけれるこの要素が。

　俺にはたまらなくシアワセ。

　

　がしっ。

　無理矢理背伸びしてケンちゃんと肩を組んで。

「ちょっとツライんとちゃう？」

「うるさいわ。」

　爪先立ちの俺を見て笑って。

　

　肩を並べて歩く、この瞬間。

「俺、ケンちゃんと同い年やねんで。」

　

　しつこいなぁ。

　そう言って笑う。

　俺も笑う。

　

　年をくうのがヤになったときもあったけど。

　このたった３６４日中の５６日間だけが、俺に与えられた優越感。

　ケンちゃんと肩を並べて。

　

　また来年。

　

　肩組んで、笑えたら、それでいい。

　

　

　いつか年齢以外でも追いついてみせますから？

　覚悟しときや〜！

　当面の目標は、まず身長や！

　

　俺はいつでも、大マジメやで！